Title:Here Come The Sun ヒアカムザサン
2024/9/11
仲間とバンでモロッコへ向かう途中。南仏の小さな村へ辿り着くと、夜更けに子猫が、窓を叩いた。助手席に寝る番だった私は、「アフリカへ行くかい?」などと話しかける。意気投合した私たちは、月に照らされ温もりを感じながら眠った。
広場の井戸端に停まった紺色のバンで、ケタケタ・カカカと妙な音を交わす東洋人。村人たちが、カーテンの影から覗くその時。宇宙人襲来を確かめに広場へ向かった者がいる。子猫だ。これが、村側からの見解。
陽が昇るとそこは、ビートルズのヒアカムザサンから湧いて出たような陽光降り注ぐ、長閑な村だった。
グチャグチャ顔のおじさんが、泣きじゃくりながら、勇気を振り絞って、バンのドアを叩いた。
「どうか猫を返してください。お願いです」
異邦人とのひと夜という、冒険を終えた子猫は、腕に抱えられ、意気揚々と帰って行った。何度も振り返りお辞儀をし、ありがとうを繰り返すおじさんの肩越しには、達成感に輝く目があった。
目に強い意志力がある風ちゃんに、モデルをお願いした。描き上げると、ジョージ・ハリソンのストリングスとともに現れ、私を見つめたのは、紛れもなく、あの時の子猫だった。
不適切なコメント、またはスパムとして報告しますか?
不適切なコメント、またはスパムとして報告されたコメントArtgeneスタッフが削除する場合がございます。
報告する 閉じる