Title:Listen to Piazzolla ピアソラを聴きながら
2024/9/11
五番街のフーのママは、世界の表舞台を歩いている。人間の息子なら、誇らしいところだが、猫にとって、ママはただ留守がちな人。でも猫親の元、姉妹と三匹でワーワーやっていた頃より、今のひとりっ子状態は気に入っている。ママと最初に目が合った時、この人間を独り占めっ!、と決めたからだ。
地下鉄に乗って五番街に辿り着いた時、そこは別世界だった。広い部屋の大きな鏡に猫発見。なぁ~んだ姉妹もついてきたのかと思ったが、裏に回ってみても誰もいない。その日から彼は五番街の貴公子となった。
窓から仁王立ちで、エンパイアを見て、下界を睥睨する時、ステージに立つ気分を味わう。それを人間界ではエンタテイメントと呼ぶのを、猫は知らない。
華やかで笑顔を絶やさないママも、フーの前では涙を流す。そんな時、自分の出番だと知って、寄り添う。
猫だらけでワイワイの温もりより、自ら孤高の猫生を選んだフーの目には、常に高貴な翳りが宿っている。
哀愁に満ちたピアソラのバンドネオンに身を任せると、ママとふたりの穏やかな至福が漂う。
その頃、姉のヒーと妹のミーはハーレムのスーパーマーケットで、陽気にドンチャン騒ぎの真っ只中。
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